「心の病」から「脳の病気」へ

最近テレビやネットで「うつ病は脳の病気」という言葉を目にしますので、ウチでも取り上げてみようと思います。

うつ病に限った話ではありませんが、長い間精神疾患の類は「心の病」として世の中に浸透してきました。

それが「心の病」ではなく「脳の病気」という表現の仕方は、なかなか言い得て妙ですね。

これにより「心の弱さでうつ病になった。」と自分を責める人は少なくなりますし、「脳の病気でうつ病になった。」だと社会的にも理解が得られやすい形になったのではと個人的には思います。

ただ、受け取る人によっては脳炎などの症状（病気）と同じ様なイメージをしてしまうので、それとは別のカテゴライズだと明確にする必要もあります。

ざっくり説明すると

① 何かしらの心理社会的要因（精神的な負荷や、思う所がある出来事）があった。

② ①によって脳の神経伝達物質（セロトニンやドーパミンなど）に通常時とは違う反応（伝達不足や過剰伝達）

③ ②によって生活習慣（睡眠・食事・身体活動・呼吸など）に変化。

④ ③の継続により更に②の反応が亢進し、様々な精神疾患へ。

というのが大まかな流れです。

「心の病」の場合は①にフォーカスしていて、「考え過ぎ」とか「心が耐えられなかった」など、さも個人の受け取り方（心の在りよう）に原因があるように思えます。

「脳の病気」の場合は②にフォーカスしていますので、本人の意思では如何ともし難い自律した脳の反応（神経伝達物質による反応）に原因の焦点を置いているようです。

それにより、自分の思考や価値観を見つめ直す「心の治療」から、神経伝達物質を促進または抑制させる「脳の治療」に、問題意識が推移しつつあります。

『心なら本人の意思次第だけど、脳ならお医者さん次第だよね』みたいな感じに一般的には受け取られやすいでしょう。

実際には「心の治療」と「脳の治療」を同時に行いながら、生活習慣に問題意識を向けるのがベストなのは言うまでもありません。

余談

そもそも心とは何なのでしょうね？

脳の働きの中で精神的活動部分を指している事が多いようですが、調べる限り未だに決定的な表現は見当たりませんでした。

『心とは脳である』という近年の脳研究は、合理的で科学的で個人的にも腑に落ちます。

しかし一方で『心』という存在を、単に神経伝達物質による反応だと割り切るのは、矛盾していますが腑に落ちない自分もいます。

心と脳は違うようで同じで、同じようで違う。

「心とは何なのか？」は、時に愉しめ、時に悩ませる問いかけですね。