症状の「原因探し」はどこまでやった方が良いのか？

慢性症状において「原因はハッキリとは言えません」「数値的には問題はありません」「これと言った異常は見当たりません」など、いわゆる『原因不明』が検査結果になる事はよくあります。

理由は単純に慢性症状の原因は「調べる事が出来ない」からです。

例えば、過敏性腸症候群などは「お腹が痛くなった」のは結果であって、原因は生活習慣や思考による緊張にあります。

睡眠不足や運動不足、栄養の偏りや極端な思考の癖は、どれだけ医学が進歩しても計測は無理でしょう。

そして、一番忘れてはいけないのは「慢性症状は必ず心理社会的要因を含む」ところですが、今回は長くなるので省略します。

検査で重要なのは、怪我やウィルス、癌性痛など原因のある症状なのか？を見逃さない事です。

決して、慢性症状の原因を調べる事ではありません。

今の医療環境では、よほどの事でもない限り2～３件も病院を回れば原因がある症状であれば、ほぼ検査で見つかります。

ところが、患者さんの多くは「症状には必ず原因は有るはず」「原因を見つけられないなら他の病院で調べる」という方がほとんどです。

繰り返しになりますが、慢性症状の原因は「調べることができない」ものです。

それどころか、調べすぎて症状とは無関係な、本来であれば害のない原因を見つける事になります。

例えば、先ほどの過敏性腸症候群で言えば「少し食道に炎症が出ていますね」なんて言われたら、逆流性食道炎が疑われて、本来なら自然治癒するレベルのものでもお薬を出されます。

お薬を否定しているわけではありませんが、有害転帰（副作用）を最小化するのは、慢性症状の基本です。

現に症状の実感もない、何も困ってもいない「高血圧」で降圧剤を飲んで、血圧が上がらず動くのが億劫になるケーズがよくあります。

高血圧の改善に「運動しましょう」と言われるのに、薬で動けないのでは本末転倒ですよね？

調べる事の出来ない原因を無理に調べようとすると、薬や心配が増え、かえって健康被害が大きくなることは珍しくないのです。

症状の原因探し。いわゆるドクターショッピングは、多くても3件も回れば終わりにした方が良いでしょう。

原因が見つかりません＝慢性症状だと思って、しっかり生活習慣の見直しをして、QOLを向上させ、可能ならば運動療法と心理療法を受けるのがベストです。

ほぼ全ての医師は無能ではありませんので、決して「このお医者さんは原因がわからないとか言っているからヤブだ」など思わないようにして下さい。

逆に、分からない原因を「○○かもしれない」と言われる方がけっこう危ないです。